改名の記録

最終更新日:2004.03.20


私が性同一性障害を理由として名の変更を行なった際の記録です。

目次

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下調べ

当事者によるレポートの幾つかをウェブ上で参照できるので、参考にしました。

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用紙の入手

2003年5月14日、最寄りの家庭裁判所に行って、用紙を入手しました。

入手してから知ったのですが、下記のウェブページから記入例や記入用紙をダウンロードすることができるようです。PDF形式で配布されている記入用紙(26.7KB)をダウンロードして印刷すれば、裁判所で貰える用紙と全く同じになります。

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申立書の作成

記入例に従って、申立書を作成しました。「申立ての実情」の選択肢では「8. その他」を選択し、括弧内に「性同一性障害」と書きました。

昔は「永年使用」を理由にして申し立てる性同一性障害者の例もあったようですが、最近は裁判所関係者の間での性同一性障害に関する認知が広がっているので、その必要はないようです。「永年使用」を理由とした改名は、一般に性同一性障害が理由であるケースより長い使用実績を求められるので、「永年使用」ではなく「その他 (性同一性障害)」とするのは重要らしいです。

下記に、私が「名の変更を必要とする具体的な事情」の欄に記入した内容を転載します。

申立人である私は日本精神神経学会「診断と治療のガイドライン」のもと、性同一性障害(性転換症)の診断を受けています。今後は同ガイドラインに沿ってホルモン療法や性別再判定手術などを受けていく予定です。周囲の理解を得ることもでき、女性として認知されて来ています。

その中で、現在の名前「**」は男性性を示唆するものであるために、性別アイデンティティの維持、社会生活における本人確認などに支障を来たしています。現在の名前を使用して生活していく場合、今後の治療の進展に伴い生活上の支障が増大すると考えられます。

そこで、家族と相談の上で中性名ないし女性名として解釈されうる「○○」の名前を考え、2002年1月以降可能な限りこれを通称名として使用してきました。しかし、通称名としてでは身分証明など社会的に女性として生活する上で支障があり、また「○○」の名前は家族や周囲の人たちに既に受け入れられてきているので、それが本名になったとしても周囲に混乱をもたらす恐れはないと考えられるため、改名を希望しています。

また、私の場合は「備考」欄に次のようなことを書きました。

将来の就職等に於いて支障が無いよう、大学の卒業証書には改名後の名前が記載されていることが望ましいため、大学の卒業(2004年3月)までには審判を頂けることを希望します。

上記の「具体的な事情」の要点を書き直せば次のような感じです。

ちなみに、最初に資料として挙げたいろはに・とらんすでは、「申立ての実情」を別紙に詳しく書くことを推奨していますが、私の場合は小さな字で詰め込んで無理矢理用紙の枠内に書きました。

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申立て

5月23日、申立てをしました。申立人の現在の住所を管轄する家庭裁判所に必要書類を提出します。

また、申立ての正当性を証明する資料を持参しました。

資料を一通り見せて、そのうちの何点かのコピーと目録を渡しました。今考えると、時系列順のライフヒストリーも持っていった方が良かったかも知れません。

「裁判所は最近では性同一性障害については勉強していて、あまりに初歩的な資料を持っていくと心証を悪くする」とも聞いていました。一応、下記の本を密かに持参していましたが、結局こういうものを見せる必要もなく話は通じました。

申立て時の詳細についてはスタックの5月23日の記事も参照して下さい。

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調査官呼出

その後、8月に入った頃に家庭裁判所の調査官から電話があり、「聞きたいことがあるので裁判所に来て下さい」と言われました。その場で話して日付を決め、翌日正式な呼び出し状が届きました。

当日は、約束の時間に裁判所の調査官室に行って名乗り、調査官の人と二人で別室へ向かいました。聞かれた内容については2003年8月13日の日記を参照してください。全部で4時間ほど掛かりました。

周囲に受け入れられているというのは1つポイントだと思ったので、名の使用歴を示す資料の中でも友人からの手紙・大学のサークルの自己紹介冊子を強調しました。自己紹介冊子はサークルの内輪向けのコピー誌で、私はそこで新しい名前を使用した上で性同一性障害をカムアウト・解説もしています。

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許可とその後

しばらくして、ある日突然「改名を相当と認める」という審判書が届きました。

あとは、役所に審判書を持っていって「名の変更届」をするだけです。届け出をすると、審判書は役所の側が受け取ってしまいます。あとであちこち回って改名の説明をするにはこちらの手元にも審判書があったほうが嬉しいので、届けを出す前に100枚コピーを取りました。

届け出後、直ぐ隣の年金課に行って国民年金の名前の変更をしました。2つの手続きを合わせて2時間ほどでした。

それから、新しい住民票を発行して貰って運転免許の名前を変更しました。

詳細は9月22日の日記を参照して下さい。

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時系列

準備

2001年9月

母と相談の上、いろいろな気持ちの上で納得できるような名前を考えた。

2001年10月6日

通信販売で、試しに新しい名前を使用してみた。

2002年1月上旬

友人たちに、改名するつもりであること。当面は通称名としてその名前を使うことを順次伝えた。

これ以降、私信やサークルでの活動、証明書を必要としない商取引・会員証の類は全て新しい名前を使用した。

2003年5月14日

改名用の性同一性障害の診断書を貰った。

2003年5月16日

さいたま家庭裁判所に行って、「名の変更の申し立て」の書類を貰ってきた。窓口に行って「名の変更の申し立てをしたいんですけど」と言っただけ。

申し立て

2003年5月23日、申し立てをした。裁判所の出張所へ行き、必要書類を渡す。

申し立て後

2003年5月28日

参与官ではなく調査官が調査することになったので、申し立て時、7月に行うと言った呼び出し調査は延期、との連絡があった。

2003年6月17日

呼び出しのときの話のタネが一つできた。

2003年8月5日

調査官から電話があって、話し合った結果、呼び出し期日が決まった

2003年8月12日

裁判所に行った。

許可

2003年9月19日

「改名を相当と認める」という審判書が届いた

2003年9月22日

役場に行って名の変更届。国民年金の名前の変更。運転免許の名前の変更

友人に順次、正式に名前が変わったと連絡。

2003年9月24日

銀行の口座名義を変更。免許証と新しい住民票、審判書を見せてすんなりと変更できた。

2003年9月25日

大学院入試に合格したので、入試事務局に「出願後、名前が変わった」と申し出た。受験票を見せ、審判書のコピー・住民票を各1部渡した。

2003年9月26日

もう一つの銀行の口座名義を変更。最初は「戸籍謄本が必要」と言われて困ったが、最終的には免許証・住民票・審判書で変更できた。

その後、幾つかの店のカードの名前を変更。こちらはすべて運転免許だけで変更できた。

バイト先に、氏名の変更を連絡した。

2003年10月1日

あちこちの店のカードの氏名を変更した。

学生証と奨学金の名前の変更の届けを出した。古い学生証・住民基本台帳記載事項証明書・審判書を提出した。

バイト先から、氏名変更の届けを出すようにと書類一式が届いて、扶養控除やらなんやら、言われるがままに記入した。

2003年10月3日

丁度、通学定期券の期限の切れ目だったので、新しい名前で定期を購入。

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